■妊娠ヒバリ

＃127罪に囁く　http://loveeater.fool.jp/loveprofessor/index.html　


「こんな処で、酒かっ食らってんじゃねーぞ」


綺麗な月を眺めて白ワインを舐めていると、ザンザスが呆れたように呟く。
庭にある小さなテーブルにワインとグラスを置いて、月夜酒をしていたら
丁度いい晩酌相手が見付った。

「たまには、良いでしょう」
「ったく」

ザンザスは、ボトルを自身もグラスをキッチンから持ってきて、トクトクと注いだ。
イメージ的に彼には、白よりも赤の方が似合う気がする。
豪快に一杯目を呷ったザンザスは、ただ黙ってワインを飲んでいる。


（こんな月を眺めていると思い出すね）


かつて、ディーノを憎く思い殺そうと思ったこと。
そして、彼を受け入れたこと。
そして、彼から逃げたこと。


「思い出すよ」
「あん？」
「月夜の日はね」

僕が、逃げ出した日でもあるからね。
山本からも、姿を消して。
ディーノからも、姿を消した。

「お前は、我武者羅に向かっていくタイプだと思ったぜ？」
「ま、そうだったね」

戦闘では、そうだった。
何事にも恐れずに。
守護者の最強の名を欲しい侭にしていた。


（けれど、）


「逃げたんだ、２回ね」


山本からだって、逃げた。
あの時は、ディーノに真実を確かめたくてキャバッローネを尋ねた。
けれど、それは口実だけだったのかもしれない。


（山本に合わせる顔が、なかった）


偶然、彼が仕事で屋敷にいない時、真実を知った。
確かにそれは、偶然。
しかし、雲雀には都合が良かったのかもしれない。


（だって）


「彼に言えなかった」


キミと僕の子じゃないって、知ってしまったなんて。
キミが、必死に隠していたモノを知ってしまったなんて。
言えなかった、言いたくなかった。


「ディーノからも、逃げたよ」


彼を受け入れようと思った。
彼は、僕を愛していたし、彼の子どもでもあったし。
でも、日を追うごとに、どんどん違和感が芽生えてきてね。


「逃げ出したよ」



●●●



「まだ、許せないか？」


彼が何に対して質問を投げたか、雲雀は理解できなかったがすぐに思い浮かんだ。
かの同級生を差しているのだろう。
意外と、友人思いなのかもしれない。

「昔はね」

殺してやりたいぐらい憎かったよ。
今は・・・、そうゆう感情はないよ。
あの子のお陰かな。

「でも、お前の想い人は違うだろ？」

跳ね馬じゃねーだろ？
憎んでいないからと言って、愛してるものではない。
雲雀は、少し眸を見開き「そうだね」と頷いた。


「好きになろうと思ったよ」


でも、無理だった。
僕が好きなのは、山本なんだ。
彼が、好きなんだ。

「なら戻れば良いじゃねーか」
「そうは、いかないよ」

もし、僕が山本の立場なら許せない。
例え不可抗力だとしても、形は残っている。
いつまでも、罪は残っている。

「子ども、か」

そう。
彼は、愛してくれると思うよ。
わけ隔てなく、愛してくれるだろう。

「でも、・・・きっと辛いよ」

色濃くディーノの血を継ぐ子どもの成長を見るのは。
いつか、子どもだって尋ねるだろう。
本当の父親は、誰かと。

（そんな辛さを山本に味合わせたくない）


「だから、今のままでいいんだ」


＊


「ねぇ、大丈夫かい？」

ここに僕らがいることをボンゴレに伝えてないんでしょう？
バレたら、キミが不味いんじゃ・・・


（これは僕の問題なのに）


「余計なこと考えるじゃねーよ」

子どもはザンザスの膝に乗っかったまま、テーブルに小さな車で遊んでいる。
（その車は、彼のお土産だった）
ザンザスが来ると、子どもはいつも、彼にベッタリだ。


「誰も、文句は言わせねー」


俺が、勝手にしてることだからな。
そんな勝気なザンザスに、雲雀もそれ以上は言わなかった。
下手な心配は、彼のプライドを傷つけると思ったからだ。

「頼もしいじゃないか」
「ふん。誰に言ってるんだよ」
「ふふふ。そうだね」

クスクス笑う雲雀に、ザンザスは面白くなさそうだった。

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